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和泉モモ
Feel the world ~この世界の感じ方 モモの葉


初めての 肝試し


小学1年の夏休み。
初めて一人で、見知らぬ人達と旅をした。

小中学生向けのキャンプイベントに当選したのだ。

バスに乗り込むと、
大きなお兄さんお姉さんばかり。
私は 最年少だったらしく、
見知らぬ人たちが皆、親切にしてくれる。



2日目の夜は、肝試し大会だった。

勇敢なトムソーヤよろしく、
山の奥のお墓まで
ろうそく1本の灯りだけで行き、
墓の奥にいる人から 証しの紙を貰ってくる。
―怖くても、絶対に走っちゃいけない。


私は もの凄く気が進まなかった。
「行きたくない」と懇願したが
規定のプログラムだからと、スタッフの人は譲ってくれない。
何とか聞き入れて貰えないか、グズグズ言って 根気を試す。

そろそろ相手が根負けするかな・・・というところに来て、
信じられないアシストが入った。

「私が付いてくから、モモちゃん大丈夫だよ!」

やり取りを見ていた 4年生の“なっちゃん”が、
胸を張って 来てくれたのだ。

    ガーーーンッ!!!!何でぇ?!

「モモちゃん、ちっとも怖くなんかないよ。
 私がついてるから、ちゃんと つかまってて!」

頼もしい口調で、なっちゃんは 私を勇気づける。
なっちゃんは、私のことをいちばん助けてくれた 優しいお姉さんだった。

    ・・・なっちゃん。
    なっちゃんは 確かに優しいけど、勘違いだよぉ。
    私が行きたくないのは、怖いからじゃなくて、
    お墓の人たちが 怒っているから・・・

    怒られるのを知りながら、
    みすみす行くなんて、イヤだよ・・・。


人垣に隠れたりして、時間ギリギリまで
「かくれんぼ作戦」をとっていたが、さすがに1年生。
いともあっけなく見つかってしまった。



私たちに、出発の番が来る。

夜道を二人で歩きながら、最後の作戦に出る。
(今こそ、本当のことを言うのだ。)

「なっちゃん、あのね、お墓に居るおじいさんたちが、
  来て欲しくないって、言ってるんだ・・・」

「大丈夫だよ!
 モモちゃんに 文句を言ってきたら、
 なっちゃんが 代わりに謝ってあげるから!」

笑顔でかわす なっちゃん。


    !!!
    ・・・お、おとなだ・・・。


これ以上 なっちゃんに迷惑をかける訳にもいかず、
せめて さっさと行って帰ってこようとだけ、誓う。



ほどなく目的地の墓地へ着く。
敷地内に入る。

やはり、空気がザワザワしてる。

古い時代の人ばかり居る。
皆、着物を着ている。
真面目な人たちだ。

みんな 怒っている。

「全く礼が無い奴らだ。いつまで続ける気だ?」
「ほんとうよ!」

目を合わせないように うつむいて歩く。


墓の奥に到着する。
スタッフさんを見て、ギョッとした。

目は 白く濁っていて、
右上には、紺色の着物を着たおじいさんが いかめしい顔で睨んでる!
・・・迷惑だ、って怒ってる。

(ひゃっ・・ごめんなさい!すぐ帰りますから!)

心の中で謝りながら、息を止めて墓を後にした。
おじいさんは最後まで、じっと こちらを睨んでいた。



お墓を出た途端、
ろうそくの火が 変な燃え方をしはじめた。
風も無いのに、ボゥッボゥッと大きく広がる。

直感的に、さっきのおじいさんだと思う。

「モゥ・・だから来たくなかったんだもーん・・・
 私、ちゃんと言ったもーん・・・
 おじいさん、怒らないでよぉ~・・・。」

涙がポロポロこぼれてきた。

「モモちゃん!後ちょっとで 着くんだから、泣いちゃダメ!
  皆に笑われちゃうよ?!」

なっちゃんが、私をたしなめる。


しゃくりあげながら、何とか涙を止めようとしていると、
前方の林の中に、ユラユラ光る光を見つけた。


「・・・なっちゃん。
 あれ、あそこ、火の玉・・・。」

「え?!・・・・ホントだ。
 だけど、
 スタッフさんがお化け役をしてるんだよ、きっと。
 だいじょーぶっ!任せて。おどかしちゃおう!」

なっちゃんは、得意そうにズンズン歩いていく。
慌てて 後を追う。


「・・・誰か、居ますかぁー?」

勇敢な なっちゃんの背中に張り付くようにして、
私も近くに寄ってみる。


返事は無い。

ただ、夏の夜の なまぬるい風が ユラユラ通るだけ。

・・・スタッフさんの陰はなかった。


2つの火の玉も 
ユラユラと心許なさそうに揺れている。

「昔の時代の お父さんと、男の子」。

優しいお父さんは、私たちが盛り上がっているのを
自分の子どもにも見せてあげてる・・・



「ぅわぁーーーーっ!」

なっちゃんは 大声と共に 一目散に走りだした。

私も真似して 走った。



皆のいる場所に帰ると、
ろうそくは溶けて変形し
先ほどの お爺さんの顔のような形に ひしゃげていた。


安堵と共に、悲しさと恐怖がドッとこみ上げる。

「グスン。グスン・・・。
 モゥ・・・だからヤダって言ったのにぃー・・・」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、
私は泣いた。わんわん泣いた。



お化けが怖くて 泣いたのではない。

自分の言うことを 誰も分かってくれないのが
悔しくて悲しくて泣いていた。

だけど、誰も 知る由はなかった。



「モモちゃ~ん。もう怖くないよぉ、大丈夫だよー。」

知らないお姉さんやお兄さん達が、
代わる代わる 慰めてくれる。
私は気にせず、気が済むまで泣いた。



この一件で 私はめでたく、
“恐がりで泣き虫な 最年少の女の子”になった。

翌日以降、皆が更に親切になったのは、言うまでもない。


 

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